2010年01月29日

◆医療の現在 生きていく力 12

野村さんが、音を頼りの自己注射を開始した頃から、世間の風向きに変化が生じました。介護を、家族の責務ではなく、社会の責務にしようという動きです。こうした動きが結実し、2000年に介護保険制度が施行されたのです。
野村さんは初年度に申請して、要支援に認定されました。さらに2年後、視力の低下に伴い、野村さんは、要介護1に認定されたのです。
要介護Ⅰに認定された90歳の野村さんは、新たに病院の近くに出来た、比較的低価格の有料老人ホームに入居されました。
この有料老人ホームには日勤帯(8時―17時)に二人の看護師が勤務しています。夜間は介護福祉士など介護職の人が交代で勤務するという態勢になっていました。
こうした介護施設では、介護が日常の主要な業務なので、深夜帯には、看護師が配置されてない場合が多いのです。
しかし、介護が必要になった高齢者の多くは、日常的な医療行為を必要としています。導尿、浣腸、痰の吸引、床ずれの手当てなど。これらは、“診療の補助行為”とされ、看護師には、許された業務ですが、介護福祉士など介護職の資格では、できないことが原則なのです。
その一つに毎日のインスリンの注射がありました。特にインスリン注射は、朝の食事の前 とか、就寝前とか、日勤の時間外に注射することも多いので、介護施設では、本人による注射に頼らざるを得ないのです。
こうして、有料老人ホームに入居された後も音を頼りの自己注射は続いたのです。
しかし、野村さんの療養環境は、確かに改善されました。

次回に続きます。


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Posted by 杉謙一 at 07:12│Comments(0)レッスン
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