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2010年03月31日

◆養生の実際 身体活動 1-7

なんでBEE(ビー)を1.2倍するの?
ここで“特異動的作用”という耳慣れない言葉が登場します。
“食事誘発性熱産生”とも言います。こちらの方が、イメージしやすいかもしれません。夏、冷房のないところで、牛丼をかき込むと汗が噴出してくるという感じです。つまり、食べると、熱が発散するという経験を専門的に定義したものです。
お金に例えれば、利益を上げるにはコストがかかる。得られたお金から、コストを差し引いたものが、ネットの利益であるという話。この喩えのコストに相当するのが“食事誘発性熱産生”というわけです。
BEE(ビー)を1.2倍するのは、“食事誘発性熱産生”を考慮して、1.2倍するということのようです。
権威によって、定められたBEE(ビーを1.2倍するとREE(リー)になる。
そのREE(リー)は、実測することができると書きました。
その方法は?
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:41Comments(0)養生

2010年03月30日

◆養生の実際 身体活動 1-6

前々回、「“ビー”?とか“リー”?とかの話です。」と書きました。説明します。
ビーはBEE(basal energy expenditure)、日本語では、“基礎エネルギー消費量”と言いますが、“基礎代謝量”の方が、一般的かもしれません。
“食事摂取基準2010”でも“基礎代謝量”が使われています。
リーはREE(resting energy expenditure )、日本語では、“安静時エネルギー消費量”と言います。
BEE(ビー)は、実測できません。既に、定められているのです。
因みに、前回の田中さんと管理栄養士の話で、出てきた“ハリスベネディクトの式”は、BEE(ビー)を算出する計算式です。このようにBEE(ビー)は、権威によって定められた数値です。“食事摂取基準2010”では、基礎代謝基準値として、定められています。

REE(リー)は実測できます。直接法と間接法があります。実測できるので、確からしく思われますが、実測する、施設による値のばらつき、コストなど、様々な問題があります。
BEE(ビー)を1.2倍すると、ほぼREE(リー)になるとされています。
何故?
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:20Comments(0)養生

2010年03月29日

◆養生の実際 身体活動 1-5

ヒトは60兆個の細胞で構成されているという話はよく聞かれると思います。それぞれの細胞は、エネルギーを燃やして、生きている。身体活動の有無とは、無関係に、60兆の細胞が生きていく為には、一定のエネルギーを必要としている、これも、よく分かる話です。
“ビー”?とか“リー”?とかの話です。

田中さん:「栄養士さんに言われて、一念発起して、1500kcal の 食事にしているけど、最初の1週間で、1kg減ったけど、その後 1ヶ月たっても変わらんのだよね。」
田中さん:「何でも、基礎代謝とかいうのがあって、ゴロンと寝ていても、カロリーを使っているそうだね。」
管理栄養士:「その通りです。勉強されましたね。田中さん。」
田中さん:「ちょっと興味が湧いてきたので、インターネットで調べてみたんだ。」
田中さん:「“基礎代謝で検索していたら、ハリスなんとかの式というのが出てきてね。」
管理栄養士:「ハリスベネディクトの式ですね。」
田中さん:「そうそう それそれ! 横文字の名前は覚えにくくなってね。最近は。
それで、計算式も載っていたから、自分の基礎代謝を計算してみたんだ。性別、体重、身長、年令が分かれば計算できるからね。」
管理栄養士:「凄い、田中さん。そこまで熱心な方は珍しいです。」
田中さん:「そしたら、僕の基礎代謝は、約1500kcal なんだ。ということは、この1ヶ月基礎代謝量の食事で頑張ってきたわけだ。それでいて 体重は減らない。どうしてかね?」

食事指導している管理栄養士には、なかなか手強い田中さんのようです。
次回に続きます。  


Posted by 杉謙一 at 07:19Comments(0)養生

2010年03月26日

◆養生の実際 身体活動 1-4

人間が食物を食って、エネルギーを得るということは、原理的にはモノが燃えるということと同じなのだということが、ラボアジエの爆発熱量計で、示されたことは、前回、“食生活”で、書きました。
同様に、身体活動は、エネルギーを消費すると考えられています。
1kgの物質を1メートル移動するのには、1ジュールのエネルギーを要する。体重74kgの田中さんが、歩くのは74kgの物体が移動すると考える訳です。
ちなみにラボアジエの爆発熱量計は、水温の上昇を尺度とし、カロリー表示。移動はニュートン力学から計算され、単位はジュール。
1kcal(キロカロリー)は4.18kJ(キロジュール)と換算されます。

よく 使われる 保健指導の 言い方
「田中さん、体脂肪は 要するに カロリーの預金通帳の残高なのですよ。収入が多くて、支出が少なければ、通帳の残高が増えてゆく。つまり 体脂肪が増加するのです。
収入が多いとはカロリーは過剰に摂取すること。支出が少ないとは、身体活動が少ないこと。 わかりますか、田中さん。」
という 次第です。

人間をモノとして、理解して、物理学の用語で理解すること。こうした 考え方に私達は、なじんでいるのです。
こうした考え方の、結果として、カロリーの出納→体脂肪の増減 ということになっている訳です。
言わば、カロリー原理主義。
では、身体活動とエネルギー消費の詳細を考えてゆきます。
次回に続きます。  


Posted by 杉謙一 at 06:37Comments(0)養生

2010年03月24日

◆養生の実際 身体活動 1-3

管理栄養士:「2kg の 体脂肪を 身体活動で、燃やそうということですね。田中さん」
田中さん:「なにかね、その シンタイカツドウ というのは。聞きなれない言葉だが。」
管理栄養士:「最近の考えでは、わざわざ 着替えて 運動するというのは それはそれで良いのですが、毎日の生活で、身体を動かすということが 重視されているのですよ。例えば、田中さんが、お孫さんと 遊べば、早足歩きと 同じ 運動量になるという考えです、それで これらを 総称して 身体活動と 呼ぶことになったのですよ。10年前に発表された“健康21”でね。」
田中さん:「さすがに 物識りだねぇ もっとも まだ 孫には 恵まれとらんけどね」
管理栄養士:「失礼しました。まだ、還暦前でしたね。」
管理栄養士:「ところで、田中さん、体脂肪を1kg 燃やすには、7000kcal分の運動をすれば良いと分かっています。6ヶ月後に2kgの体脂肪を燃やすには、1日100kcal 弱 身体活動を新たに増やしたら良いのです。」
ということはと 管理栄養士の立て板に水の、説明が続き、結論として、従来の生活に 新しく20分の早足歩きをするように との宣託でした。
なんとなく 釈然としにまま 保健指導室を後にした田中さんでした。
管理栄養士の説明は、カロリーに基づく説明です。
次回、突っ込んで考えてみます。  


Posted by 杉謙一 at 07:11Comments(0)養生

2010年03月23日

◆養生の実際 身体活動 1-2

或る日の栄養指導室での会話。
管理栄養士:「田中さん、腹囲が89cm で 血圧が142/84 と 上の血圧が高くて、中性脂肪が空腹時152mg/dl と 少し高くて、積極的支援になられたのですね。」
田中さん:「ちょっと 腹回りが大きい程度で、保健指導なんて たまらんね。住み辛い世の中になったもんだ。」
管理栄養士:「まあまあ 田中さん。身長167cm で 体重74kg ですから、BMI も 26 を越えていますから、少し 太り気味でもあるのですね。」
田中さん:「自分では 太っているとも思わんがね。これでも、そこそこに節制してるつもりだし。」
管理栄養士:「今回の、保健指導では、私達、保健指導をする者が、上から目線で、指導するのではなく、田中さんが、ご自分で目標を設定していただいて、その実現に向けて、私達がお手伝いするという考えなのですよ。とりあえず、腹囲をどの程度にしたいか、考えていただけますか?」
田中さん:「結局、決めろということだろ。そうね じゃあ 腹囲2cm 減 ということにしておくか。」

管理栄養士:「わかりました。腹囲2cm 減が、当面の目標ですね。体重だと2kg 減ということになりますね。」
田中さん:「但し、食い物を これ以上 減らすのは イヤだよ。今でも、女房に絞られているのだから」
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:57Comments(0)養生

2010年03月20日

◆養生の実際 身体活動 1-1

養生の第一のポイントを食生活とすれば、第二のポイントは、身体活動となります。
身体活動? 以前は、“運動”と言われていました。
“運動”という言葉は、しばしば誤解されます。①鍛える ②激しい ③特別な身構え というようなイメージを伴うのです。こうしたイメージの究極の姿はアスリートかもしれません。特別な訓練を積んだ、特別な人。こうした誤解を避ける意味でも身体活動という言葉が使われていると思われます。
運動と言えば、ウォーキングウェアーに着替え、ウォーキングシューズを履き、歩行計を装着して、イザと出かける感じです。
これに対して、出勤中に、目的のバス停の一つ前で降りて会社まで歩くのも 身体活動と見れば、同じ意義があると考えるのです。
関節の屈曲と伸展、筋肉の収縮と弛緩、心拍数と呼吸数の増加、代謝の活性化 こうした点からは、両者は同じことだという訳です。
養生という観点からは、“運動”や“アスリート”には違和感があります。
以前、養生を「自分の将来を見据えて、生活習慣を見直し、本来の生きる力を滞りなく発現させる日々の暮らしぶり」と表現しました。
訓練を積み重ねて、限界に挑戦して 乗り越え 新たな限界に挑戦するアスリートに、感動する私達ですが、養生とは異なるように思います。
養生としての身体活動の実際を考えていきます。
  


Posted by 杉謙一 at 23:56Comments(1)養生

2010年03月18日

◆養生の実際 食生活 1-6

田中さんとしては、腹一杯食べたいという素朴な欲求があって、それを、カロリーの原理
で抑圧されているという反発が心中に潜んでいるのかもしれません。
管理栄養士には、医師の指示基づいて、田中さんに、指示カロリーを遵守してもらう責務
があります。
二人の立場は、相反していますが、炭水化物1g=4kcalという知識については、受け入れ
ています。
その知識の背後には、ヒトが飯を食ってエネルギーを得るということとモノが燃えるとい
うことは、同じ現象だということを あからさまにしたラボアジエの実験が控えていると
いうわけです。
しかし、その後の、知識の展開は、「熱量計で実測されるエネルギー」と「代謝性エネルギ
ー」は同じかという疑問を提起しているわけです。
分かるほどに、更に 分からないことが増えていきます。
田中さんと管理栄養士が、腹に一物もって、対峙するのではなく、田中さんの養生の実際
を共同して探る栄養指導となるといいのですが。
  


Posted by 杉謙一 at 20:54Comments(0)養生

2010年03月16日

◆養生の実際 食生活 1-5

ある日の栄養指導室、管理栄養士と糖尿病の田中さんの会話。
管理栄養士:「田中さん、1600kcalの食事療法に挑戦してみてどうですか?」
田中さん:「いや とにかく 腹が減ってね、この前、同病の鈴木さんが、いいことを教えてくれてね、何でも ピーナツは血糖に あんまり 影響ないんだってね。腹がグーグー言う時はピーナツでしのいでいるよ」
管理栄養士:「なにを 言ってるんですか! 田中さん。ピーナツは、脂肪の塊りの高カロリー食品なのですよ。 ピーナツを30粒も食べたら、ご飯 軽く一膳のカロリーなんですよ。」
田中さん:「エエ、・・・・」

基本的にカロリーに還元するというのが、食事療法の原理の一つですが、アトウォ-ター
の係数は、炭水化物1g=4kcal  蛋白質1g=4kcal  脂肪1g=9kcal としたものです。
炭水化物、蛋白質、脂肪は3大栄養素とされていますが、これらをカロリーに還元する係
数なのです。
こうした 言わば カロリー原理主義は、栄養指導する立場からは、スッキリはしている
指導される方としては、釈然としません。
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 21:58Comments(0)養生

2010年03月14日

◆養生の実際 食生活 1-4

例えば、五訂食品成分表で「オリーブ油」を調べると100gが921kcal と記載されています。つまりオリーブ油1kgは、9,210 kcal という訳です。熱量計でオリーブ油を実測すれば。
体脂肪1kg=7000kcal と かなり差がありますが、熱量計で生じる反応と生体での反応は差があるのは理解できます。
ちなみに 同じ油脂食品でも有塩バターは、100g:745kcal 無塩バターは、100g:763kcal
と 当然ながら、食品によって異なります。
実務上では、エネルギー換算係数が活用されます。(エネルギー換算係数の拠り所は、熱量計での実測値です。)
例えば、精白米には、炭水化物、蛋白質、脂質が、含有されていますが、そのうちの炭水化物のエネルギー換算係数は4.12kcal/g というように計算されています。蛋白質、脂質にもそれぞれエネルギー換算係数があるのです。かくして精白米100gのエネルギーは、356kcal と記載されるのです。
無数にある食品の群れを前にして、一つ一つの食品のエネルギー量を確定しいくのはため息の出るような作業ですし、五訂食品成分表を傍らに常備して、いちいち調べながら栄養指導をするのは、煩雑で、実際的ではありません。
栄養指導の現場では、アトウォ-ターの係数が活用されています。
アトウォ-ターの係数とは、どんなものなのでしょう。
  


Posted by 杉謙一 at 10:19Comments(0)養生

2010年03月13日

◆養生の実際 食生活 1-3

熱量計で実測されるエネルギー(=カロリー)と生体で利用されるエネルギー(=カロリー)は、同じものなのか?
素朴ですが、やはり 気になる疑問です。
1個のブドウ糖が完全に酸化されると38個のATPが作られ、これが生体でのエネルギー(=カロリー)の姿です。ATPがADPに変換される時、1個のATPが12kcalのエネルギーが放出され、これが、例えば、歩行の時のエネルギー源になるというわけです。こうした細胞のレベルでのエネルギーを「代謝性エネルギー」と呼ぶこともあります。
素朴な疑問を、もう1回提示します。
「熱量計で実測されるエネルギー」と「代謝性エネルギー」は同じかという疑問です。

話題を転じて、現在、メタボ健診が、おこなわれています。正式な名称は、「特定保健指導」。1時ほどの熱気はありませんが、現在でも法律に基づいて、実施されています。
ご存知のように、メタボ健診は、簡単に計測できる「臍周囲径」で、将来 血管病にかかりそうなハイリスクの人を、特定し、保健指導(生活指導)で痩せさせようというアイデアです。
メタボ健診とメタボ保健指導では、体脂肪1kg=7000kcal という大原則があります。
実は、この大原則と前段での疑問が 関係あるのです。
何故か? 次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:54Comments(0)養生

2010年03月10日

◆養生の実際 食生活 1-2

ラボアジエは、爆発熱量計を工夫して食物のエネルギーを測定したのです。
例えば精白米100g を厚いステンレスの筒に入れ、密封して高圧の酸素とし、電流を流すと、米が爆発して燃える、つまり酸化反応が生じて、水と二酸化炭素になります。その時、ステンレスの筒の周囲の水の温度の上昇で、背白米100gが356kcal の燃焼熱であることが確定されるという理屈です。
背白米を飯に炊飯すると、100gの精白米の飯が168kcal と ほぼカロリーが半減します。米が水を吸収して膨化するのが、炊飯という作業ですから。
ラボアジエによる爆発熱量計の実験の一番のミソは、ヒトが飯を食ってエネルギーを得るということとモノが燃えるということは、同じ現象だということを あからさまにしたということかもしれません。身もフタもなく。
ラボアジエが、フランス革命の時代の人で、最後はギロチンにかかったのは有名ですが、理性ですべてを分析しようとした時代に、食物のカロリーについてのこうした原則が確立されたのは、時代精神とラボアジエの天才が、結合したということなのでしょう。
ただこうした、食物をカロリーに還元してしまう割り切りに、私達が、心の奥で抵抗を感じるのも事実です。
「食べ物には“いのち”がこもっています。私達は炭水化物とか蛋白質とかの物質をモノとして食べているのではなく、食べ物の“いのち”を頂いているのです。」というような考えです。
脱線しました。
次回は、カロリーの問題をもう少し考えます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:50Comments(0)養生

2010年03月09日

◆養生の実際 食生活 1-1

さて、食生活すなわち食べることになると どうしてもエネルギーの話から始ります。
エネルギーとはカロリーと同じ意味です。
“カロリー” とてもなじみのある言葉です。
「サーロインステーキは高カロリーだから」とか、「カロリーフリーのビール」とか毎日の生活でも、しばしば“カロリー”という言葉が出没します。
急いで、定義をおさらいしておきます。
1calは “1gの水を1℃上げるのに必要な熱量”と定義されています。1kcal(カロリー)=4.184kJ(エネルギー)。1 kcalは1calの1000倍ということは言うまでもありません。かくして、砂糖1gは約4kcalとすると(食品成分表によれば、上白糖で3.84 kcal ですが)、4,000cc の水の温度を1度 上げる熱量(=カロリー=エネルギー)ということになるのです。
冬の寒い朝、「暖かい、ものを食べると、身体があったまるね。」「そうだね。」という会話を交わした記憶があると思いますが、食べるー暖かかいの大本にはカロリーがある・・カロリーはエネルギーに他ならない・・エネルギーこそ万物の源  というのが、現代を生きる私達の“ものの観方”ではないかと思います。
私達は砂糖を燃やすと熱が出るというのも化学の知識から、知っています。酸化と現象です。砂糖は、炭素と水素と酸素でできていて、これが燃える すなわち酸化して、二酸化炭素と水になるが、この過程で熱が出るということです。
このことを証明したのは ラボアジエで、約200年前のことです。
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:57Comments(0)養生

2010年03月08日

◆養生の実際 総論7

後は、外来も途絶えたので、医師は 思いに沈みました。
減塩が血圧を下げることは、日本人の殆どが知っている。医師、看護師、管理栄養士、保健師 誰もが強調している。
しかし、或る人にとっては、どこまで効果があるかは やってみないとわからない。とても効果がある、さほどでもない人。
多分、普通 塩分をどれだけ摂っているかでも違うだろう。
ただ問題は、「塩辛いものを減らすと、血圧が下がる、塩分は1日6g以下に、味噌汁でしょう、漬物でしょう、味噌汁に醤油をかけるなんてとんでもない」 というような、従来の療養指導が、耳をすり抜けてしまうことです。
やや 辛辣な言い方になりますが、言っただけ 聞いただけの パファーマンスのような。
今回の、患者さんと息子さんの場合は、いくつかの偶然が、一瞬 合致して、患者さんの“意欲のレバー”を引いたのでしょう。息子さんだからこそ可能な技だったのかもしれません。
しかし、医療者として、療養指導を実践する時、紋切り型の指導ではなく、養生の実際を啓発できる工夫はないだろうか。
次回から、「養生の実際」を書いてみます、最初は食生活から。
  


Posted by 杉謙一 at 06:30Comments(0)養生

2010年03月03日

◆養生の実際 総論6

「息子から言われたんです。いくら 薬を飲んでも、母さんのように、塩分を摂っていたら血圧は下がらんよ。父さんみたいに、頭の血管が破裂して、介護が必要な状態になっても困るからってね」と患者さん。
「そうですか・・・」 やや憮然の態の私。

以下、私の心中の独白
これまで 何回も、何回も塩分のことは 強調したのに。そんなに 息子さんの一言が効くのかな。そう言えば、息子さんは医療関係の会社勤めで、東京に住んでるのだったな。週 2-3回は電話で、話すと言ってたっけ。
まあでも いいことだな。息子さんとの話でも これまで 何回か塩分のことは 出ただろうから、今回のことは 「機が熟した」ということかな。
それにしても、塩分を減らすとこんな効果があるものだろうか。80歳をとうに越した人でも。

「もう1回 血圧 測らせてください。」と私。
「どうぞ どうぞ」
「146/60 です。やはり 本当に下がっています。塩分を減らす効果って凄いですね。」

こうして、晴れ晴れした 表情で、女性は診察室から出て行かれたのです。
医師も、嬉しい気持ちになりました。
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:32Comments(0)養生

2010年03月02日

◆養生の実際 総論 5

私の考えや思いは乱れます。
“80歳代の半ばを、越した方の血圧を、日本高血圧学会のガイドラインを尊重して、収縮期140を目指して、本当に得をするのか。つまり、高血圧による血管合併症を減らす効果が期待できるのか。ご主人に連れ添ううちにできたあがった塩味への嗜好を、あえて変えてまで。そもそも、塩分の摂取を減らして、本当に血圧は下がるのか? 本当は、薬(降圧薬)で、下げたいのだが、もう4種類も使っているし。それにしても 収縮期血圧180超はあんまりだよな。せめて160程度にはしないと、わざわざ通院しもらっている甲斐がないよな。”
ところが・・、或る日、外来でいつもの時間(午前10時頃 来院されます)に、いつも通り測った血圧が下がっていたのです。
1回目 152/62 2回目 148/58  脈拍はいつも通り 64/分 と 少しゆっくりしています。
「あれ 今日はどうしたんだろう。 血圧が、上の血圧が下がっていますよ !」
と思わず、私の声のトーンも上がります。
「それがね、先生」とニンマリする患者さん。
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:33Comments(0)養生

2010年03月01日

◆養生の実際 総論 4

これまでの話しでは、食品の栄養成分表示がナトリウムで表示されていた時、“2.54”という数字が、“養生の実際”のための情報ということになります。
これから、三つの分野に分けて、“養生の実際”について、私なりの情報を発信してみます。
食生活/身体活動(運動)/ストレス
以上3つの分野についてです。

養生はヒトが生きていく上で、意義があるのでしょうか。
私が、実際に遭遇した、80歳代の高血圧の女性のことを 思い出します。
ご主人は、高血圧性脳出血で、20年前に亡くなられました。
奥様も、ご主人が亡くなられた頃から 血圧が上昇し、数年して、降圧薬が開始されました。
私が主治医でした。
ご主人は、酒飲みで煙草吸い、塩味の強いものが大好きで、養生が苦手の方でした。
奥様は、お酒も煙草も無縁ですが、ご主人と永年連れ添ううちに、濃い塩味への好みはしっかり、刻みこまれたのです。
奥様の血圧はなかなか下がりません。次第に、降圧薬の種類が増えていきました。
私は、「塩分の方は 如何ですか? とりすぎてないでしょうね。」と習慣的に聞きました。「そんなに、とってませんよ。でも先生 もう この年ですから、今更ね。」との答え。
ここで やり取りは終わっていました。
いつのまにか、降圧薬は4種類になり、それでも、収縮期血圧(上の血圧)は、時に180を超すという有様です。
困ったなと 思う私。
次回に続きます。
  


Posted by 杉謙一 at 06:33Comments(0)養生