2009年11月05日

◆医療の現在 生きていく支え 7

地域包括支援センターの担当者が、かなりの手間ひまをかけて、長期に療養可能な病院を探してきました。富田さんも 一応納得し、入院されました。
小規模な有床診療所です。

ああ 富田さんも遂に入院か。ちょっと寂しいね などと医師はスタッフと話したことでした。
それから、1週間後、ヒョッコリン富田さんが、愛用のシルバーカーを押して現れたのです。
「富田さんじゃないの! どうしたの!」
スタッフの大声で、診察室にいた医師も急いで、受付に出て行きました。ニコニコした富田さんが立っていました。

診察室に案内しての話
富田さん:「いや 先生 入院したばってんね、山のふもとで、人里 離れて 寂しいとよね。タクシーを手配して、帰ってきたと」
医師も絶句。

地域包括支援センターの担当者は、次に有料老人ホームを探してきました。
富田さん:「今度のとこは、よかごとあるね。」
富田さんもかなり気に入っている様子です。
何回か、再診し、男が部屋に侵入してくる話と風呂の話を聞いたのですが、遂に 入居されました。
いよいよ 富田さんとも お別れだなと医師もスタッフも 直感したことでした。

それから、しばらくして、或る日の午後、外来も途絶えて、診察室で一人ボンヤリしている時です。
医師はふと富田さんのことうを思いだしました。
被害妄想、幻覚 あきらかに 病的現象だが、単身で、富田さんが 生きていく上で必要だったのかもしれない そう 生きる支え。
病的現象は、消えるのが良いという 考えは、悪くはないが、何がなんでも消すとう考えは、少し 偏っているのかもしれない。
静かな時の流れ。半覚半睡のマドロミの中で、ボンヤリとこの想いに浸る医師でした。


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Posted by 杉謙一 at 05:24│Comments(0)レッスン
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