2009年10月20日

◆医療の現在 古くて新しい問題 酒。4

患者:「先生、酒は飲んでいいですか?」
医師:「酒? 適量ならいいですよ」
と打てば響くように返ってこないのは何故か?
一つには、医師が診療経験で苦い思いをした記憶からきているのではないかと私は考えています。

例えば、糖尿病と高血圧の50代男性(会社の管理職)を、何年も診ていたとします。
医師:「血糖と血圧のコントロールはもう一つですね。 塩分と酒を控えましょうね。」
患者:「わかりました。気をつけます。」
という類の類型化した 療養指導をしていたとします。
薬物療法もしているが、検査値は思わしくない。
時に酒の摂取状況も聞いてみるが、適当にはぐらかされる。
そんな、診療が続く或る日、時間外に腹痛、嘔吐、下痢などの急性症状で受診。
当直医が診察すると、明らかに黄疸も出現し、“アルコール性肝炎”で、重症であったというような経験です。

アルコール性脂肪肝の人が、なんらかの引き金で、連続的に大酒を飲み続けると、発症する可能性のある、“アルコール性肝炎”です。
同じ アルコールで始るので、似たように聞こえる “アルコール性肝炎”と“アルコール性脂肪肝”ですが、もって非なる、二つの病気なのです。

こうした苦い経験を、何度かすると、医師は、患者が酒を飲むことに、否定的になり、許可する時は、シブシブと許可するという、態度になるように思います。

酒であろうが、喫煙であろうが、何事とも経験してみないとその実相はよく理解できないということは言えるように思います。
アルコールの代謝とか、アルコールの健康障害の統計とか、アルコールが肝臓の細胞に与える影響とか、そうした 医学的知識をいくら蓄積しても、酒をのむことの実相はよくわからないのです。
どういうことでしょうか?

次回に続きます。


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Posted by 杉謙一 at 06:31│Comments(0)診療の徒然に
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