2009年10月09日

◆医療の現在 血液サラサラ再考 11

では、お腹を開けたり、胸を開いたり という本格的な手術の時はどうなるのでしょう。開頭手術、開胸手術、開腹手術などです。
アスピリンなら手術の5日前から休薬、ワーファリンも然りといった大まかな基準はあります。
薬によって、血液が過度にサラサラになっているのを 本来の状態に戻すということです。しかし、本来、必要があって、過度に血液をサラサラにしてるんだし・・という問題。
「必要性」も、実は、人それぞれなのです。

心臓が不規則に拍動する“心房細動”で、抗凝固剤であるワーファリンを飲んでいる方と、心臓の弁に異常があって、その挙句、“心房細動”になった方では、「必要性」が異なるのです。
後者の方は、今風に言うと、ハイリスクなのです。
ワーファリンを中止している間に、心臓に血栓ができて、脳血管(動脈)に詰まってしまうリスクが高いのです。
これに対しては、
ワーファリンを中止する→ヘパリンという点滴に代替する→手術直前にヘパリンも中止して血液が過度にサラサラでないことを検査で確認する→速やかに手術し止血処置をシッカリ→止血確認後にヘパリン再開→その後落ち着いて、ワーファリンに戻す 
というややこしい手順を踏みます。

手術に責任を持つ胸部外科医は、止血処置をしても、ダラダラ出血する手術部位は恐怖です。いくら 上手に血管を縫い合わせても、最終的には、ヒトの止血機構の発動で止血するのですから。
循環器内科医にとって、ワーファリンを休薬しているうちに脳塞栓を発症されるのはなんとか防止したい。
胸部外科医と循環器内科医の関心が、患者さんを巡って 相反するのです。

しかし、こうした、誰が見ても、問題というケースは、心配ないとも言えるのです。
問題の所在を、医療者が皆、認識し、注意を払うからです。
多分、こうした方は 地域の拠点病院で、手術するでしょう。
胸部外科医を中心として、麻酔科医、循環器内科医が充分話し合い、血液サラサラの程度についての検査も充分行なわれるでしょう。

他方、最近は、内視鏡を使った医療手技が日進月歩です。
キーワード、優しい検査 楽な治療です。

抗血栓剤を服用している方が、内視鏡的手技を受ける場合は?
次回に続きます。


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Posted by 杉謙一 at 06:48│Comments(0)診療の徒然に
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