2009年10月03日

◆医療の現在 血液サラサラ再考 7

簡単に エコノミークラス症候群の説明をしておきます。
そもそも、下肢は、心臓から隔たった部位です。
身体を1つの国に例えるなら、辺境の地なのです。
静脈中の血液は、辺境の地から、はるばると 心臓を目指して還るわけです。

考えてみると、心臓の駆動力は、下肢の静脈には、及んでいないのですから、はるばると心臓に還ってくるのは 大変なことなのです。特に、普通 下肢は心臓より下に位置しています、臥位の時以外は。 
血液は水と同じように重いので、下に流れようとします。静脈弁の活躍で、静脈中の血液は、なんとか 心臓に還ってゆくのです。
椅子に長く 腰掛けたり、歩かずに立っていると、下肢が浮腫み、けだるくなる方は多いと思います。
毎分4-5Lの血液が心臓から駆出され、その一部は、下肢に向います。下肢を下垂したポジションで、重い血役を重力に逆らって、絶えず心臓まで、持ち上げるのは、身体にとって大変な作業なのです。
歩いていると、身体にとって、この作業はかなり楽なものになります。歩くたびに、下肢の筋肉群が収縮して、下肢の静脈を圧迫して、血液を押し上げるのです。この動きと静脈弁な開閉が連動すると、静脈の血液はスムースに心臓に還るのです。
足が第2の心臓と言われる所以です。

長時間、狭い場所で、足を下垂しておくと、下肢の静脈の血液は、停滞して、動きが遅くなります。歩かないと第2の心臓も機能しません。
静脈中で、血液凝固系の作動が優勢になります。気がつくと血栓ができているというわけです。
普通、下肢静脈の血栓は、悪さをしません。本人にもわかりません。
おおきな静脈にたくさんできると、下肢の一部や全部が発赤して、傷んだりすることもありますが。

劇的な変化は、下肢の血栓が、心臓に還って、心臓から打ち出された時に生じます。
心臓から、血液を打ち出すポンプに左心室と右心室という2個のポンプがあることは、微かに記憶があると思います。
左心室は大きく全身(肺以外)に血液を打ち出します。右心室は小さく、肺のみに血液を打ち出します。
下肢から還ってきた、血栓は、右心房に入ってくるので、結果的に右心室から、肺に打ち出されます。
肺動脈は次々と枝分かれして細くなりますから、あるところで、血栓は、一斉に、細い動脈で詰まるのです(肺塞栓)。
これがエコノミークラス症候群です。

もう1回 元に戻って、話しを概観しましょう。
①心臓に血栓ができる
②動脈に血栓ができる
③静脈に血栓ができる
以上三つでした。
エコノミークラス症候群は、③から始って、こじれたタイプでした。
①と②は、実は 似た出来事なのです。

次回に続きます。


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Posted by 杉謙一 at 06:16│Comments(0)診療の徒然に
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