2009年04月28日

◆医療の現在 メタボ考 4

“由緒正しい糖尿病”とは、血糖を維持する仕組みが、特別に障害されて生じる病態。
「正統な高血圧」とは、血圧を調節する仕組みが 特別に障害されて生じる病態。
ともに、“特別に”という点が、ミソで、他の異常はないが、そこだけが、障害されているという意味で、“特別”なのです。

例えば、普通 1回の食事で、80g 前後の炭水化物を食べているのですが、血糖値100mg/dlという糖尿病でないヒトの、血液中のブドウ糖総量は10gもないわけですから、1回の食事で、10倍以上のブドウ糖が,血液中に流入してくるという、凄まじいことが、食事のたびに繰り返されているわけです。

血糖値100mg/dl の10倍とは、血糖値1000mg/dlということですから、少し、血糖値に関心のある方には、凄まじいという形容詞の趣旨はお分かりだと思います。
そこを、うまくしのいでいるのが、血糖を維持する仕組みで、そこには、インスリンというホルモンが主役として登場します。
その肝腎のインスリンがうまく作用しないとか、充分に分泌されないということが、糖尿病の中核で、その点だけに、焦点を合わせていけば、充分に病気の管理できるというのが、“由緒正しい糖尿病”なのです。

「正統な高血圧」も、考え方は同じで、インスリンの変わりに、レニンーアンギオテンシンとか交感神経とかが登場します。

では、メタボ糖尿病とかメタボ高血圧とかは?
血糖が上昇するとか、血圧が上昇するという点では、糖尿病であり、高血圧なのですが、腹腔脂肪の蓄積が、諸悪の根元で、これから出た枝葉として、血糖が上がったり、血圧が上がったりするというのです。

従って、血糖を下げる薬や血圧を下げる薬を、使うのが治療の本筋ではなく、蓄積した腹腔脂肪を燃やすのが、治療の本筋だということになるのです。
特別に血糖を維持する仕組みが障害されていたり、特別に血圧を調節する仕組みが障害されていたりしている訳ではないので、一般的には、とても高い血糖、とても高い血圧にはならないだろうという理屈になります。

こうして、軽微な異常も拾い上げないということで、朝食前の血糖99mg/dl未満 血圧130/85未満 を正常とするという “厳しい基準”(判定される側から見ると)が設定されたのです。

“由緒正しい糖尿病”には、糖尿病独自の治療が展開されます。
「正統な高血圧」には、高血圧独自の治療が展開されます。
では、メタボ糖尿病とかメタボ高血圧には、どんな治療が 展開されるのでしょうか。

次回に続きます。


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Posted by 杉謙一 at 06:12│Comments(0)診療の徒然に
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