2009年02月04日

◆患者から見える病気 医師から見える病気 4

4.以前、“療養担当規則”のことを書きました。医療保険を使って、保険医療をする際のバイブルともいうべき“療養担当規則”では、多くの医師は、ろくに読んだことも無いという奇妙な存在です。
その中に「・・・・常に医学の立場を堅持して、・・・適切な指導をしなければならない」という記載があります。
適切な指導とは、現代では患者教育に相当するでしょう。「故きをたずねて新しきを知る」と言いますが、現在のように、変化が激しいと故きをたずねる余裕がありません。
以前、印象に残った言葉があります。
バイオエシックスー医道、ヒーリングアートー医術、メディカルサイエンスー医学 というのです。
今風のカタカナ語も、以前からある日本語で言い換えると、味わいがあるし、結局 医療は、変わらない部分もあるのだと改めて納得する効用もあります。
ただ変わりつつある部分もあります。
じつは、糖尿病診療で、独自性を発揮していた患者教育は、去年からまったく装いを新たにして、
実施されたのです。
去年から、始った“特定保健指導”です。
メタボ健診という言葉で有名になりましたが、メタボ健診が前段とすれば、“特定保健指導”は後段となります。
以前にも、述べたように、“特定保健指導”では、“段階的変容モデル”や“コーチング”などの、認知行動療法の手法が取り入れられることになっています。
 こうした、新しい潮流と、“患者から見える病気論”は、どんな関係にあるのでしょうか。
特定健診―特定保健指導は、わが国で法律に基づいて行われる大々的な世界初の試みともいえます。
①血管病による臓器障害(心筋梗塞・脳梗塞・腎不全・足の血行障害)を、減らすのが目標です。
②日本の医療保険の被保険者全員に健診を受けてもらいます。
③ハイリスクの人を特定して層別化します。(腹囲、血圧、血糖、血中脂質、喫煙で層別化)
④層別化して、ハイリスクと認定された方に、重点的にマンパワーが投入され、行動変容を促します。(食生活、身体活動、禁煙)
⑤成果を評価します。
こうした方法を疾病管理といいますが、基本的に集団を想定した理論です。成果は、糖尿病患者数が減ったとか、最終的には、血管障害を発症する人が減ったということで評価することになります。
 よさそうだが、もうひとつピンとこないというのが私の印象です。現場で、「患者から見える病気、医師から見える病気」のギャップにアタフタしている人間としては、世界が違うなと言う印象です。
医師―患者関係を中心とした患者教育と疾病管理のもとでの認知行動療法的手法を用いた行動変容の働きかけとの問題を次回考えてみます。


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Posted by 杉謙一 at 06:43│Comments(0)診療の徒然に
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