2008年10月21日

◆医療の現在 血液サラサラの行く末 1

“ポリピリ”という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。“ポリ”は多数を意味しており “モノ”と対の接頭語です。ピルは錠剤の意味です。
 つまりポリピルは1錠に数種類の効果を詰め込んだ夢の長寿薬というイメージです。
 このポリピルの考え方には、従来と異なる点がいくつかあります。
従来、“薬”は、一人の患者さんをキチンと診断し、慎重に投薬して、効果と副作用を見極めながら継続の是非を決めるものでした。外科の医師が、手術に自分の存在意義をかけるように内科の医師は投薬に自分の存在意義を懸けていたのです。
 “ポリピル”は違います。例えば、55歳以上の男性であれば、片っ端から飲ませてしまおうという話です。何で男性なのか、55歳の男性は、55歳の女性に比べて、血管が詰まりやすいからです。
つまり、“ポリピル”は、血管の詰まりをどうして減らすかをターゲットにしています。
“ポリピル”は一人ではなく、集団に焦点を合わせています。
“ポリピル”は、確率的に効果を判定しようとしています。“ポリピル”を服用した100人と服用しまかった100人で5年後の血管のつまりに差があるかという判定です。
いわば、“ポリピル”は、健康食品の薬版と言えるかもしれません。
最初は、医師仲間での、ちょっとした話題だったのが、いつのまにか現実の課題になりつつあるようです。
老化は、肌に来る、目に来る、耳に来る、筋肉の衰えに来るということで初老期以降誰もが体感する訳ですが、近代医学は器官系に分けて、老化を認識しようとします。
大きなテーマの一つが血管と血流です。血流が不十分になり、終に詰まってしい組織(細胞の集合体)が死んでしまう(壊死といいます)状態を“梗塞”と言います。
心筋梗塞、脳梗塞という医学用語は、耳慣れていると思います。小さな梗塞なら、たいしたことなくても大きな梗塞だと、器官系(臓器)の機能が障害されます。
大きな脳梗塞だと寝たっきり、大きな心筋梗塞だと発症数時間以内の死とか、助かっても心不全状態に陥るといった話です。
こうした事態を、予防できないかと知恵を絞るのが、医療・医学の本能のようなものです。
ポイントは、“しなやかな血管”と“血液サラサラ”です。
血管がしなやかさを喪い、血液がドロドロし、終に血栓(血の塊)が、詰まってしまうのですから。背景にあるのは、老化です。血管の老化です。
これを、遅らせようというのが、“ポリピル”なのです。
1錠の錠剤に何が入っているのでしょう。アスピリンは必須です。血小板の働きを抑えて血液を塊にくくします。文字通り“抗血栓薬”と命名されています。
スタチンと総称される高脂血症の薬も登場します。コレステロールを下げると同時に血管をしなやかにする作用も強調さえており、この作用が期待されてるのかもしれません。
降圧薬も配合されるそうです。血圧を下げると同時に血管をしなやかにすると言われているタイプの降圧薬です。
 いずれも少量ずつを1錠に積めて、55才以上の男性に飲ませると、重要臓器の臓器障害をかなり減らせるのではないかというのが“ポリピル”なのです。
 次回に続きます。


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Posted by 杉謙一 at 06:54│Comments(0)診療の徒然に
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