2008年08月25日

◆医療の現在

“風邪”というのはとても身近でしばしば遭遇し、奥の深い問題だとかねがね思っています。“風邪”は医学用語ではないことはご存知の通りです。医学辞典には、“感冒”“かぜ症候群”“上気道炎”などとなっていますが、通常の会話では、「昨日、感冒になってね」とは、言いませんね。「昨日、風邪を引いてね」と言います。医療従事者同士の会話でも、“風邪”派が大部分だと思います。
 玄人と素人の語法の違いでは、“盲腸”と“虫垂炎”有名ですが、こちらは、通常の医療従事者同士の会話で“盲腸”ということは、まずないのではと推測します。
 “風邪は万病のもと”“お腹の風邪”“風邪で体調を崩し還らぬ人となられた○○さん”など様々な場面で風邪は登場します。因みに最後のフレーズは弔辞の一部です。
  風邪と腹痛はもっとも頻度の多い症状です、後者は“腹が痛い”という症状を表現しているので、簡明なのです。風邪も指し示してる内実は、腹痛に近いのですが、あたかも疾患名のようにも使われているのが、特異的なのです。
 一般の人は様々な体調の変化を感じ様々に表現しているのですが、医学という専門性を通過すると、明確な定義のもとに様々な専門用語が貼り付けられ、一般の人にはよそよそしい世界となります。風邪はこうした、問題を象徴しています。
 また普通の人にとっては、頻度からいっても、深刻さから言っても重要である風邪が医師の世界では、重視されていないというそのギャップも興味深いことです。風邪の専門医師とは、気道のウイルス感染の専門医師ということになりますが、風邪を引いたから風邪の専門医に診て貰おう考える人はまずいません。
いつもながら御託が多すぎるようです。以下にポイントをまとめます。
①感冒は、医学的には、上気道(鼻、副鼻腔、咽頭、喉頭 時に気管―気管支)の急性炎症である。原因の8割以上はウイルス。時に細菌、アレルギーなど。
②感冒は、急に生じて、永くても2週間以内に治癒する。直らないとか、重くなるのは医学的には、他の病気が続発したということ。例えば、感冒から喘息を併発したなど。
③感冒を直す、薬はない。風邪薬は風邪の症状を軽減して、治癒までを過ごしやすくする薬のこと。
④薬には副作用の心配もあるので、感冒の時は、暖かく安静にして、薬は飲まないのが、一番得な方法だが、本当にこの風邪は感冒なのか?薬で症状を軽減し、仕事や遊びを続けたいなど、人それぞれなので、医者にかかるのは、やはり意味がある。
⑤典型的な経過を辿りつつある風邪は心配ないが、ヘンな経過を辿り始めると要注意。それを察知するためには、自分の風邪の通常の経過をよく観察して記憶に留めておくとよい。

次回は風邪との付き合い方をまとめます。


同じカテゴリー(診療の徒然に)の記事
 医療の現在 食事療法 あれこれ 11 (2009-12-01 06:08)
 医療の現在 食事慮法 あれこれ 10 (2009-11-29 06:29)
 医療の現在 食事療法 あれこれ 9 (2009-11-28 06:21)
 医療の現在 食事療法 あれこれ 8 (2009-11-25 06:45)
 医療の現在 食事療法 あれこれ 7 (2009-11-24 06:36)
 医療の現在 食事療法あれこれ 7 (2009-11-21 06:20)

Posted by 杉謙一 at 06:07│Comments(0)診療の徒然に
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。