2008年08月05日

◆医療の現在 チェンジ! チャンジ!

本年、4月1日から始まった特定健診は、始動から稼動に入りつつあるようです。特定保健指導の方は、まだ始動の段階なのかもしれませんが、指導を実践する人材養成は急ピッチで進んでいると漏れ聞きます。そうした場で、飛び交っているキーワードが“行動変容”です。語感的にピンとくる日本語とは言えませんが。
因みに、グーグルで検索すると、24万件ヒットしました。詳細に見たわけではありませんが、特定保健指導がらみが多いようです。
“行動変容”は勿論、英語を翻訳した日本語ですが、“behavior modification”が、もともとの英語だったようです。更に遡ると“行動精神療法”に由来しているようです。
“行動精神療法”は、“behavioral psychotherapy”の日本語訳です。
しかし、大本である、英語の方が、“behavior change”という簡単な表現が拡がり、最近では、行動変容=behavior change という理解でよさそうです。
「チェンジ! チェンジ! さあ変わらなくっちゃ」という時代のムードにもマッチしているのでしょう。
もっともこのあたりの薀蓄の精確さは、今ひとつなのであしからず。
「健康のための行動変容」という翻訳本があります。原題は「HEALTH BEHAVIOR CHANGE」で2001年に出版されています。
この中に「行動変容の分野に、このモデルが登場したことを天文学での新惑星発見に例えた・・」という文章があります。“このモデル”とは、“段階的変容モデル”のことです。
この本で、段階的変容モデルの考え方の核は、“準備状態”であると書かれています。
「行動を変える準備ができていないのに、行動について話し合うのは逆効果である」というわけです。
私達になじんだ日本語で表現すれば、「機が熟しているか」を察知できるかどうかにすべてかかっているというのです。
私が直ちに、連想したのは、E・キューブラー・ロスが、“死にゆく人々との対話”で学んだ、死の5段階でした。因みに「死ぬ瞬間」第1版は1971年に日本語訳が出ています。
疾病管理、ポピュレーションアプローチ、行動変容などなど 新しい翻訳語が飛び交いますが、結局、ヒトとヒトが出会う臨床現場で揉まれると、還っていく場は或る場に収束していくのではないか。
そこに、核があるのではないかということです。
これはなにか? こころ、 脳、 精神、 霊、・・・。
多分一つ言えるのは、他の存在から切り離された“個”をいくら観察しても、ナルホド!という了解には至らないだろうということです。
行動科学の応用編である、行動変容理論が、“準備状態”でナルホド!と了解したのは、他の存在と遭遇したということではないでしょうか。
多分、“患者中心の医療”の鍵はこのあたりにあるのではないでしょうか。



Posted by 杉謙一 at 06:07│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。