2009年10月23日

◆古くて新しい問題 酒。6

「うぶ」な状態から、老獪な状態に 移行していく経過に、たくさん経験があるわけです。酒で心身の健康を障害した、様々な方に、医師として係った経験が。

しかし、医師といえども酒を飲みます。
アルコールを受け付けない医師もあるでしょうが、それはアルコール不耐症という体質の問題にすぎません。
医師でない人と同様、1割前後、存在するだけです。

自分自身の飲酒経験と酒で心身の健康を障害した方を身近で観察した経験がどう切り結ぶのか。

急性アルコール中毒による健康障害は、こうしたことを考える必要がありません。
それこそ、酒にナイーブな、大学生が、歓迎コンパで、一気飲みをして、意識混濁に陥ったりするケースです。

長期に常習的に飲酒し、日々の生活の中で、いつのまにか、酒が、重要な部分を占めるに到った方、こうした問題を考える時に、健康障害についての専門職たる医師の飲酒経験が気になるのです。
酒を飲む医師は酒飲みに甘く、喫煙する医師は煙草吸いに甘いという 説もあります。
甘くしていて、大きな問題が生じてない時は、お互いに幸せなのですが。

親が大酒のみで、その醜態を気嫌いして育った子供が、一滴も飲まないという方もあります。
他方、いつのまにか親と同じように大酒のみになっていたというケースもあります。

こうした点が “古くて新しい問題 酒”のむつかしいところです。

そもそも、“大酒のみ”の大酒の量とは?
150ml以上のアルコールだと言われています。
ビール500mlと焼酎のお湯割り6杯も飲めば、軽くアルコール150mlを越します。
常習的に大酒を飲む人は、アル中である と言わざるを得ないと飲酒量で迫ると話しが分かりやすいのですが・・・。

私もナイーブであった研修医時代の経験談です。
糖尿病で教育入院した方の主治医に当てられ、酒の話になりました。
「先生、私はアル中ではないですよ。1日目は焼酎1合、2日目は2合って言う具合に、毎日1合増やしてね、1升になったら、翌日はまた1合ってことで、自由に量を変えれるんですよ。ていうことは、アル中じゃありませんよね 先生」
海千山千のアル中の方に、翻弄された思い出です。

アルコールを他人事として観察して、たくさんの知識を、集積するだけでは、本当にアルコール問題に肉迫できないのではないか。
医師自身の酒に関する経験と、患者さんの経験が切り結ぶような治療関係がないともうひとつでは。

次回に続きます。


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Posted by 杉謙一 at 06:44│Comments(0)診療の徒然に
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