2009年10月07日

◆医療の現在 血液サラサラ再考 10

抗血栓剤を飲みながら、出血せざるを得ない医療的処置・手術を受ける。

“血液サラサラ”と“血液ドロドロ”が葛藤する状況です。

“あっちを立てれば、こっちが立たない”というか、今風の言葉では“利益相反”というのでしょうか。

数百万人の方が、抗血栓薬を飲んでいる現在、とてもありふれた、しかし 悩ましい問題なのです。

 

実際を 概観してみましょう。

まず、抜歯の場合です。出血します。

抗血栓薬を飲んでいる方は、数日前から薬を中止して、抜歯に備えることが、患者さんを配慮した注意深い医療行為ではないかと 思われていました。

 

つまり、抜歯のことを患者さんから聞いた内科医師が、ああ そういえば この人はバイアスピリンを飲んでいたなと思い出し

「抜歯の5日前から、血液サラサラの薬 飲むのは止めといてくださいね。抜歯した後、血が止まらなかったら困るからね」と言うと

患者さんも この医者は、よく気がついてくれる医者だと信頼感を増していたのです。

 

また 歯医者の方も、「かかりつけの先生に、血液サラサラの薬出てないか 聞いといてください。抜歯の数日前に中止してもらうように。薬によって、いつ中止するのかが 違うからそれも聞いといてね。」と言うと

この歯医者は、色んなことを配慮してくれるいい先生だなと、患者さんは感じたのです。

 

ことろが、抗血栓薬を中止している時に、血液ドロドロになり、血栓→梗塞が、有意に多いというデータが出てきたのです。

有意にというのは、もし抗血栓薬飲み続けていたら、そのうちの何人かは血栓→梗塞は起こらなかったのではないかと、推定されるという意味です。

 

他方、歯科医からは、抗血栓薬を服用した状態でも局所的な処置を入念にすれば、問題ないという見解が出てきたのです。

 

一転して、抜歯予定→抗血栓薬中止 は 不適切な医的判断になってしまったのです。
医師にとっては大変な時代だと 愚痴をこぼしたくなる時代です。

次回に続きます。



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Posted by 杉謙一 at 06:43│Comments(0)診療の徒然に
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